トレースを学ぶ
トレースとは
トレースとは、簡単に言えば下絵をなぞることで、イラストを描いたり、写真とそっくりな絵を描いたりするためには必須の作業となります。
例えば、下のような手書きのイラストを用意します(スキャナで取り込みました)。
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このイラストに色を塗りたいとすると、トレース作業をしなければ、下の絵のように フォトショップなどのペイントソフトで根気よく塗るしかありません。
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それでは、このイラストをイラストレーターのペンツールでなぞって輪郭を作った後に色を塗ってみます。 イラストレーターでトレースした画像にはグラデーションを施すことができるので、下の絵のように立体的に見えるようになります。
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イラストレーターの画面
イラストレーターを起動し、「ファイル→新規」をクリック、カラーモードは印刷をする予定があるならCYMK、Web上だけでの公開ならRBGを選びます。
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初期設定では画面上に特定のウィンドウしか出ていないので、使いそうなウィンドウは、ウィンドウタブから選んで出しておきましょう。
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とりあえず、ナビゲータ、パスファインダ、書式→文字、あたりにチェックを入れておけばよいでしょう。
小さな画面の中のタブメニューはドラッグで出し入れが可能ですので、そのうち自分の使いやすいようにカスタマイズしていけばいいと思います。
カラーは、線と塗りで区別されています。どっちが線だか塗りだかわからない場合は、 カーソルを当てれば線とか塗りとかコメントが出るのでそれを参考にすればいいと思います。
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ショートカット(Shift+X)で線と塗りを変えることができます。
図形描画と回転・反射
手始めに長方形を書いて見ましょう。
長方形ツールがクリックされた状態で、画面上に移動し左クリックし、幅と高さを入力します。 左クリックをしたままマウスを移動させると、数値を入力せずに色々な形の長方形を描くことができます。
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長方形に関わらず、全ての図形にいえますが、一度、図形を描いた後、すぐにまた左クリックを押すと、イラストレーターが 前回書いた図形の幅と高さを覚えていて、全く同じ図形が描けます。 いちいちコピー→ペーストをするよりは少し速いのかもしれません。
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Shiftを押しながらマウスを動かすと、幅と高さが等しい正方形を描くことができます。
Altを押しながらマウスを動かすと、中心から長方形を描くことができます。
多角形ツールとスターツールは、方向キー(↑or↓)を押しながら描くことで、角数を変化させることができます。
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描いた図形は、回転ツールやリフレクトツールを用いて、回転や反射させることができます。 回転ツールを押したときに出てくる星のようなマークは、回転の中心ですので、これを移動することで回転中心を変えることができます。 回転の角度はShiftを押しながら回転させることで、45度単位で回転させることができます。 また、回転は選択ツールから回転させることもできます。
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最後に、練習として三角形を描いて見ます。 三角形は、多角形ツールかスターツールを選択し、↓の方向キーとShiftを押しながら描きます。 できた三角形は斜めっているので、回転ツールで目的の角度に調整します。 実は三角形は多角形ツールの角数を3に変えて描けばよいだけなのは内緒。
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選択ツールを知る
オブジェクトを選択するための選択ツールは、「選択ツール」「ダイレクト選択ツール」「グループ選択ツール」「自動選択ツール(10移行)」「なげなわツール」 があります。
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選択ツールで選択すると、オブジェクト全体が選択され、オブジェクト全体の移動、回転、拡大・縮小ができます。 複数のオブジェクトを選択したいときは、Shiftを押しながら一つずつ選択します。 オブジェクトをコピーする場合は、「編集→コピー→ペースト」でもできますが、Altを押しながらドラッグしたほうが早いです。
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ダイレクト選択ツールは、選択ツールのように全てのアンカーポイントを選択するわけではなく、特定のアンカーポイントのみを選択することができます。 うまく、1点を選択できないときは、一度、Shiftを押して、その一点の選択のみ解除した後、もう一度そこを選択すると選択できます。 複数の点のうち、特定の2点ないし3点を選択したいときは、Shiftを押しながら一つ一つ選択していくか、エリアでくくるかどちらかの方法を使います。
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グループ選択ツールは、グループを選択できます。色々なオブジェクトが重なっている場合に使うのがよいでしょう。
なげなわツールは、選択するエリアを自由に設定できます。ダイレクト選択ツールで複数の点を選択するときに、四角いエリアで囲めない場合とかに使うのでしょう。
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自動選択ツールは、色の差異で自動的に選択してくれるツールです。ツールをダブルクリックして塗りの許容値を変えれますが、使い勝手はあまよくないと思います。
ダイレクト選択ツールと選択ツールの2つはよく使うので慣れておきましょう。
画像を取り込む
手書きのイラストはあらかじめスキャナで、写真データもデジカメから画像データをパソコン内に取り込んでおきます。
イラストレーターに画像を取り込むには、「ファイル→開く」か「ファイル→配置」をクリックします。
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下絵として取り込む画像を選択し、テンプレートとリンクにチェックを入れて、配置をクリックします。すると、50%透明化・ロックされた状態で配置されます。
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リンクにチェックを入れるのはファイル容量を軽くするためです。リンクにチェックすることで画像を他の場所からそのつど読み込むので軽くなりますが、ファイルを 誰かに渡す際にはリンク元の画像も一緒に渡さないと画像が抜けたファイルを渡すことになります。
また、画像には、JPG・GIF・BMP・PNGなど色々な形式がありまして、それぞれカラーの色数が異なります。CYMKモードで作成するつもりなら、あらかじめフォトショップ などでRBGカラーからCYMKカラーに変えておいてください。拡張子は、コントロールパネル→フォルダオプションからの設定で見ることが出来ます。
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配置された画像のロックは右下のレイヤーを選択して鍵のマークのチェックをはずすことで解除でき、透明化具合はレイヤーをダブルクリックして調整できます。
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パスの扱い方
配置した画像をトレースしていく前に、簡単にパスの扱い方を学んでおきましょう。
ペンツールを選択して、線を黒、塗りをなしに設定したら、まず直線を書いて見ましょう。
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直線は始点と終点をクリックするだけです。ゆがみのない直線を描きたいならShiftを押しながらクリックしましょう。
45度単位の斜めの直線を描く場合は、Shiftを押しながらクリックします(45度に満たなければ0度になります)。
なんどもクリックしていくと、直線が終わることなく続いていきますので、いったん直線を終わりにしたい場合は、左メニューのペンツール以外のツールを 選択するか、ペンツールが選択されている状態で、Ctrlを押して選択ツールorダイレクト選択ツールに一時的に変えて画面上をクリックします。
普通は後者のCtrlを押す方法を使います。Ctrl押しでの選択ツールへの切り替わりはペンツールを含めてどんなツールであっても当てはまります。 切り替わったときに、選択ツールになるのかダイレクト選択ツールなるのかは、前に使ったほうのツールが選択されます。
次に、曲線(ベジェ曲線)を描いてみましょう。
図のようにマウスをドラッグして見ましょう。描き終わったらCtrlを押した状態で画面上をクリックして描画を終了させましょう。
パスは「アンカーポイント」「セグメント」「方向線」の3つで構成されており、直線の時には、アンカーポイントとセグメントの2つを気にすればよいだけでしたが、 曲線になると方向線を気にしなければなりません。
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この方向線が知らないヒトには厄介ですが、考え方さえつかめば特に難しくはありません。
方向線を手の向き、セグメントを下敷きに置き換えて考えてみてください。セグメント(下敷き)を曲げるためには、両方の方向線(手の向き)を斜めに 向ける必要があります。
弧の膨らむほう側は、始点の方向線の向きで決まります。
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これだけ知っていれば、直線と曲線は事足りるでしょう。
トレースする1
さて、下絵として配置した画像を元にトレースしてみましょう。
線の色は何色でもかまいませんがわかりやすい色に、太さは粗いイラストなら太めのほうがはっきりしていいのかもしれません。塗りはもちろんなし。
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まず、ペンツールを選択してください。トレースを開始する場所はどの場所でもいいですが、できれば線と線の区切りが望ましいです。
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始点からの方向線が円が膨らむ方向に出ている(長さは適当に)状態で、次のアンカーポイントの方向線を調整します。
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うまく弧が重ならない場合もとりあえず無視して描いてください。
目的の弧が描けたら、次の弧が膨らむ方向に方向線を向けます。次の弧の方向線を調整すると、前の弧の方向線がくずれてしまうと思います。
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そこで、使うのが「アンカーポイントの切り替えツール」です。これを使うことで、前の弧の方向線の向きはそのままの状態で、次の弧の方向線を 調整できます。
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アンカーポイントの切り替えツールは、ペンツールが選択された状態でAltを押すと、押している間だけ切り替えることが可能です。 また、Ctrlを押すことで、ダイレクト選択ツールor選択ツール(ダイレクトにしておくほうがいいかも)に切り替わりますので、トレースの最中は、 常に左手はCtrlとAltが押されている状態となります。
これを繰り返して、アンカーポイントを少なく描くことを意識して順番になぞっていきます。
アンカーポイントがどうにも足りない場合は、アンカーポイントの追加ツール、いらない場合はアンカーポイントの削除ツールを使って調整します。
基本的に、色別に部分部分を作成して、最終的に合体させて作るので、一旦ここで終了します。
最後のパスの終点を始点に重ねると、○マークがでるので、その状態でクリックすると連結できます。もし○マークがでないで、 ×とか/が出る場合はうまく選択できていないか、今までつないできたパスが途中で切れているので、選択ツールで移動させてからもう一度試してみてください。
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選択が全く解除されてしまって連結できなくなってしまった時は、ダイレクト選択ツールで連結したいアンカーポイント(始点と終点の2点) をクリックして、「オブジェクト→パス→連結」を押して連結させます。
最後に、きちんとトレースできているかどうか見るために、塗り、線の色情報がカットされるアウトライン表示 で確認してみます。 アウトライン表示は結構使います。
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パスの切断
次に、耳の付け根のほうを作成します。
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ペンツールで個別にトレースしてもよいのですが、それだと付け根と耳がうまくマッチしなさそうなので、Shift+ドラッグでコピーしたものを はさみツールで切って、途中からつなげて、全体の輪郭を描き、パスファインダを使って切り取って作成する方法を使います。
パスを切断するツールには、「消しゴムツール」「はさみツール」「ナイフツール」の3つがあり、それぞれ、切断の仕方が異なりますので、 状況に応じて使いやすいものを選択します。
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「スライスツール」というのは、パスを切断するのではなく、エリアを切断します。つまり、1枚の絵をいくつかに分割して分けて保存するものです。
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トレースする2
パスの削除・切断の仕方がわかったら、さっそく、その中の「はさみツール」を使って下の図のように 2つのアンカーポイント上でクリックしてセグメントを切断します。
切断する前の部分も必要なので、Alt+ドラッグでいくつか(3つあればOK)コピーしておくのを忘れないでください。
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切断した切り端はいらないので削除してもらって、もう一方の大きな方を使います。 切断してしまったので、口が開いたような形をしていますが、これに継ぎ足しをしながら大きな耳全体を作ります。
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耳全体のトレースが終わったら、耳先と耳全体を重ね合わせてます。
色があるより、アウトライン化しておいた方があわせやすいと思います。
ここで、マウスであわせるとうまくあってくれない場合の対処法としてキーボードの方向キーを用いる方法があります。デフォルトではキー入力が0.3528mmなっていますが、 もっと細かく動かしたい人は0.1とか0.05とか数値を減らすとよいでしょう。
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設定は、「編集→環境設定→一般→キー入力」からできます。
うまく合わさったら、一旦プレビューモードに戻し(アウトラインだとパスファインダが使えない?)、パスファインダで、形状モード→形状エリア→前面のオブジェクトで型抜き をクリックする。うまく型抜きされないとしたら、オブジェクトが重なっている順番が逆だからです。オブジェクトを選択して→右クリック→アレンジ→最前面へ、で順番を変えましょう。
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これでうまくいかないなら、2つを同時に選択した状態で、パスファインダ→パスファインダ→分割、をクリックし、オブジェクト→グループ解除、でもできます。
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ここまで出来たら、最初の耳先とくっつけて完成です。とりあえず二つのオブジェクトを選択ツールで指定して、グループ化しておくとよいです。
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色を塗る
色塗りは、最初はそれっぽい色でべた塗りしてからはじめます。塗り方は、塗りをダブルクリックして色を指定します。
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次に、立体感を出すためにグラデーションを使います。耳先はグラデーションメッシュを後で使うのでとりあえず置いておいて、 耳の付け根にグラデーションを施します。最初は黒と白の線形で設定します。
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そして、黒色の部分をクリックして色を水色の濃い目に変えます。同様に白を水色の薄めに変えます。 2色だけでは物足りない場合は、あらたに色を追加します。
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最後に、グラデーションツールを使って、グラデーションの角度を指定したら耳の付け根の完成です。
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続いて、耳先の制作ですが、これはグラデーションメッシュツールを使って色を塗ります。オブジェクト→グラデーションメッシュを作成、から 自動で作成することも可能ですが、ここでは用いません。
左のグラデーションメッシュのボタンをクリックした状態で、ここだ!と思う点をクリックするとそこにアンカーポイントが生成します。
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適当にそれっぽいところでクリックしたら、たぶん「隠れアンカーポイント」と呼ばれる意味のないアンカーポイントが自動的に生成されているはずなので、 アンカーポイントの削除ツールを使ってそれらを削除しておきます。
削除が終わったら、ダイレクト選択ツールに持ち替えて、色を指定したい点を選択して、そこの部分の色を変えます。
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4点指定した場合は、4点で囲まれた四角形の色は、選択した色でべた塗りされます。
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このように、どんどん色を指定していって耳先の完成です。
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レイヤーを知る
耳ができたら、他の部品も同様な手順で作成していくわけですが、このイラストのように簡単な構造であればいいんですが、もっと細かく設定していく場合は、 レイヤーと呼ばれる概念を使って分けて処理したほうが効率的です。
レイヤーっていうのは透明な下敷きのようなもので、下に書いたものが上に透けるので、合わせて見れば1枚の絵として見れます。ただ、合わさったときに絵が 重なってしまった場合は、もちろん上に重ねたほうの絵で下の絵は隠されてしまいます。
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このレイヤーを使って、部品別に分けて描きます。 先ほど作った右耳(ほんとは左)が描いてあるレイヤーの名前をダブルクリックで「右耳」と変更したら、新しいレイヤーを開いて、同様に「左耳」と名前を 変更して同じように作成します。
同じ部品が描かれたレイヤーを複製しておきたい場合は、新規レイヤーを作成ボタンではなく、複製したいレイヤーをAltを押しながらドラッグして複製コピー してください。
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このような手順で作っていきますが、体は顔よりも下に重なるので、最後に作っても下のほうに移動しておきましょう。 これで完成です。
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スポイトツールを使った色の塗り方
絵も書けない、色のセンスもないというあなた(私も・・・)のために、対象物(主に写真かな)の色をスポイトツールで吸いとって、描いている絵の色として使ってしまおうというものです。
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1とか2の番号は、最初にダイレクト選択ツールを選択後に、スポイトツールを押すことで、スポイトツールを使用するときに、Ctrlですぐダイレクト選択ツールに切り替えることができるようになるからです。
続いて、トレース用かつ、スポイトで色を吸い取る用の素材を用意します。
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この素材を、まずは地道にトレースしていきます。かなりずれていますが、実を言うと、上の写真をトレースしたのではなく、別の写真をトレースした物なので(いわゆる手抜きです)
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ここまでできたら、元の素材とトレースした絵を重ねて色を塗るのですが、配置を使ってトレースした場合、50%の透過率になっているので100%の透過率に戻します。このままスポイトで抜き取ると50%の透過率の色でしか吸い取れないためです。(戻し方はlesson15参照)
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白黒色の状態で、グラデーションの角度云々を調整しておくとよいでしょう。
そしたら、イラストレーターのメニュー(表示)→アウトラインで、画像をアウトラインで表示させます。もちろん色は消えますね。
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角度とか、スライダの数を調整しつつ、色をどんどん吸い取っていくと、下のような感じになります。全く同じではないですが、最終的にある程度の見栄えになっていればいいのかなと思います。(素人ですので・・・)
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他の部分の色もスポイトツールを使って吸い取って色を塗っていきますと、最終的に下のようになりました。
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上のような単調な色の組み合わせならいいんですが、ダイヤのように細かい色が密集している場合は、新しいスウォッチを作成してしまったほうがいいです。
たとえば、
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こんなダイヤも、photoshopとかウィンドウズのペイントでもいいんですが、適当な大きさに切り抜くことで、新規スウォッチとして登録することができますから、あとは塗りつぶせばいいだけです。(なお、埋め込みボタンを押さないと、スウォッチ登録できないみたいです)
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